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少年サッカー指導の考え方


  「少年は小さな大人ではない」。
 これが少年サッカー指導の出発点です。
 一生サッカーとつき合っていくことのできる「サッカープレーヤー」にするために、
 小学生年代でとんな指導が望ましいか考えていきましょう。



  5.少年たちの「心と体」の成長をとらえる〜いつ伝えるか〜

 少年は「小さな大人」ではありません。成長過程にあることを忘れてはなりません。

 その成長は、体だけでなく、心、すなわち精神面でも急激に行われます。

 小学校にはいると、言葉や文字の学習によって経験の範囲が非常に広がり、思考能力も発達します。また親から離れ、同年代の少年と過ごす時間(学校や遊びなど)が増えるので、仲間と協調しながら物事を進める能力も急激に伸びます。

 体の面では、毎年コンスタントに大きくなりますが、神経系統と一般型(骨格、筋力)とでは成長のカーブが違い、そのことをよく理解して指導に当たらなければなりません。

 

@ 少年の「心」

 最近、サッカースクールやサッカーチームにはいってくる少年たちを見ると、何か「教えてもらう」という受動的な姿勢ばかりが目立ちます。学習塾やピアノ教室と同じような感覚ではいってくるのでしょう。

 たしかに、「横浜マリノスサッカースクール」という名称になっていますが、私たちはこれは「学校」ではなく、「遊び場」のひとつと考えています。

「遊び」は子供の特権です。

「遊び」とは、本来的に自由で主体的な活動です。子供たちは「遊び」のなかから楽しさを見いだします。すなわち、「内発的動機づけ」を行うことができます。そして楽しいことにはすばらしい集中力を発揮し、いつまでもあきることなく続けます。そして楽しくなくなったら遊びをやめるのが、子供の自然な姿です。

 現代の日本では、子供たちの「遊び」というものが大きく変化してきています。遊びに使う時間も大幅に減少しています。

 外で体を使って遊んでいたのが、テレビゲームなど室内での遊びにとって代わられ、ガキ大将を中心に大人数で遊んでいたのが少人数あるいはひとりの遊びになってきています。またかつては年齢的に幅をもった「タテ関係」の遊び集団だったのが、同年代の子だけの「ヨコ関係」が中心になりました。

 これは「遊び」にとっては大きな危機ということができるでしょう。子供が成長の過程で経験しておかなければならないことがフルに盛り込まれた「遊び」が危機に瀕しているということは、すなわち子供たちにとって重大な危機であるということです。

 サッカーというゲームの魅力は、「自由で主体的な表現」ができるという点にあります。すなわち、「遊び」なのです。たくさんの少年たちがサッカーに引きつけられるのは、カツコいいとか、プロになれるかもしれないということより、そうしたサッカーの根源的な魅力を感じているからにほかなりません。

 サッカーを始めた少年が、もし自発的に途中でやめたくなるなら、それはサッカーの「遊び」という本質を与えることができなかったコーチの責任ということができます。けっしてその少年の「適性」の問題ではありません。なぜなら、楽しい遊びであれば、少年はけっして投げ出すことなどないからです。

「大人(コーチ)が過剰な管理や干渉で子供(少年)にサッカーをやらせる」という形になったら、子供の主体性が失われ、「遊び」としての魅力はまったく感じられなくなってしまうのです。

 少年にとってのサッカーの楽しさとは、具件的にはどんな内容をもったものでしょうか。

 1、体を動かすこと

   「行動欲求」を満足させる。

 2、できるようになること

   「達成感」をもたらす。

 3、仲間やコーチに認めてもらうこと

   「認知」される喜び。

 4、勝つこと(ライバル、試合)

    「勝利」の満足感。

 5、仲間やコーチと協力すること

   「一体感」の幸び。

 6、自分自身に勝つこと

   「努力」が実る喜び。

 以上の6つは、同じレベルにあるものではありません。年齢(学年)によって大きく違いますし、当然個人差もあります。低学年では、4以降、とくに5、6の喜びを感じられる割合は小さくなります。

 それを的確に把握し、体感させることが大切です。それによって、「内的動機づけ」を促進するのです。

 

A 少年の「体」

 R・E・スキヤモンという人が1930年に発表した有名な「発達曲線」の理論があります。それによると、人間の神経系統の発達は、一般型(骨格や筋肉)の発達に先んじ、8歳から10歳で成人の90%が完成されるといいいます。背が伸び、筋肉がつくという「一般型」の成長は、それを追いかけるように、中学から高校の年代にかけて急激に行われます。小学校の最上級生である6年生の段階では、せいぜい成人の50%にしか達しません。

 これではっきりするのは、小学生の時代にハードな体力トレーニングをすることはあまり意味がないということです。逆に、この時期にあまり激しい負荷をかけたトレーニングをすると、スポーツ障害の原因にもなります。

 逆に、紳経系を刺激する運動をこなすことが、小学生年代の少年にとっては非常に大切です。

 神経系に関係するのは、バランス、反応時間など、体の動きの巧みさを要求する運動と、ボール感覚の養成があげられます。とくに、球体のボールの動きの感覚をつかむには、この時期にボールを使った遊びをたくさんすることが大事なのです。

 

神経型が完成される6歳〜12歳の間にボールの動きに対する感覚を完成させる

 たとえば、地面に落としたボールがどのようにはね返るか、ボールの右をけったらどのように動くか、下のほうをけったらどうなるか。大きくけられたボールはどこに落ちてくるか。斜め前方からけられたボールにミートするには、どんなスピードで走らなければならないのか。

 こうした感覚は、小学校に上がる時期にはほとんどついていなくても、ボールを使った遊びをたくさんすることによって刺激が与えられ、どんどん伸びていくものなのです。

 ボールを扱う巧みさにおいては、小学校の中学年で、すでに大人なみの能力をつけていても不思議はないのです。

 物事を考え、推理し、決定する場所である脳の「前頭葉」も、5歳から10歳にかけて盛んに発達します。ですから、この時期に、何かを見て、判断することを習慣づけるのは大切なことです。

 小学生年代の少年に「遊び」が必要なのは、ここにも理由があります。先生、コーチ、あるいは親がいちいち指示をしていたのでは、考え、判断する力は十分に発達しません。少年に判断力を発揮させるには、けっして急がせないことが大事です。また、コーチは「正解はひとつではない」ことも忘れてはなりません。

 まさに成長の真っ最中にある少年の体に何が超こっているか、どういう能力がいつ成長するかを知ることによって、いろいろな刺激を「いつ」与えるかが決まってきます。もちろん、成長時期には個人差があり、簡単ではありませんが、そのタイミングを間違えないことが、少年サッカーの指尊にとって非常に重要であることがわかるでしょう。

 


「ジュニアサッカー小学生の練習メニュー」編著 横浜マリノス より
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