C.身体運動としてのサッカーの価値
@体力の概念
親が子どもをスポーツクラブやスポーツ教室に参加させる動機で最も多いのは、子どもをたくましく育てたいというものです。
たくましく育てたいということは、言葉を変えれば、体力のある子どもにしたいということです。
体力の概念についてはいろいろな学者が定義づけをしていますが、生理学者の猪飼先生、加賀谷先生の体力の概念を図に示しました。
この考え方によれば、外的環境に対する抵抗力としての防衛体力と積極的な運動機能としての行動体力とに分けられます。
行動体力とは、自分が外部に対して積極的に働きかけていく能力で、スポーツ活動において必要とされるのはこの行動体力です。また、防衛体力とは、外部からのストレスに対抗する能力、つまり抵抗力のことを表しています。
Aスポーツに必要な体力
スポーツに必要な体力は、図1−8のように、形態面としての体格・姿勢、機能面での筋力、スピード、持久力、タイミング、柔軟性、バランスなどに分類されます。
機能面での体力は、エネルギー系の体力とサイバネティックス系の体力に分けられます。エネルギー系の体力とは、身体を動かす際にどのぐらいのエネルギーを使うかという観点からみた体力で、カの要素としての筋力、時間の要素としての持久力、筋力×スピード=パワーといい表しています。
サイバネティックス系の体力とは、身体のもつエネルギーを目的に応してどのように使うかという体力で、Spacing(空間的調整)、Timing(時間の調整)、Grading(強弱の調整)の三つの要素があります。これは、どの筋肉を、いつ、どれくらい使うかということで、協調性あるいは巧緻性とよばれるものに関連しています。
B背が小さくてもサッカーはできる
スポーツに必要な体力の中で、体格の要素はサッカーではそれほど重要ではありません。バスケットボールやバレーボールでは、ある程度の背の高さがなければ選手として活躍するのは難しい面がありますが、サッカーではプレーのやり方やポジションを考えれば、背の低さもある程度カバーできます。
背の低いことがハンデにならない例としてはアルゼンチンのディエゴ・マラドーナがよくひき合いに出されます。彼のプレーを見ればわかるように、体力面では機能の面、つまり運動能力に優れているかどうかが重要なのです。
少年期には、体格の差が運動能力の差を相殺してしまうような面があり、体格の大きな子どもをそろえたチームが試合を有利に運ぶ例が多いものです、しかし、少年期の指導では、体格にとらわれずに子どもの機能面を育てることが大切です。
Cサッカーは身体運動の王様
サッカーのプレー中の動作には、実に様々な動作が内包されています。走る、歩く、ステップする、止まる、ジャンプする、倒れる、回るなどの動作の組み合わせで、サッカーのプレーが成り立っています。
動作の複雑さという面では、サッカーがスポーツの中ではナンバーワンといえましょう。少年期には、人間の神経系が急速に発達しますが、この時期にサッカーのような動きの複雑なスポーツをすることは、神経系の発達を促進するために非常にいいのです。
これは、前に示したサイバネティック系の体力を高めることにほかなりません。特に、サッカーのようにボールに対して自分の身体を協応させなければならないようなスポーツでは、スペーシング、タイミング、グレーディングの調整が必然的に鍛えられていきます。
また、サッカーはエネルギー系の体力を刺激するという意味でも、非常に効果的なスポーツです。
プレーを連続させる持久力、ジャンプやボールをけるパワー、走るスピードなどが、夢中になってボールをけっている間に少しずつ刺激されていきます。
このように、サッカーのプレーは子どもの体力の健全な発育・発達を自然な形でオールラウンドにサポートしてくれます。
「少年サッカーの指導」著者 加藤 久 より