A.同質文化としてのサッカーの価値
@サッカーは人間の持っている重要な文化財
岡野俊一郎氏は“人間にとってスポーツとは何なのか”ということを考えた場合、『スポーツは人間の持っている重要な文化財』ではないか、と述べておられます。
この“スポーツは…”という言葉の代わりに“サッカーは…”という言葉を使っても、少しも違和感はありません。
なぜ、スポーツあるいはサッカーが文化かといえば、人間が単に生命を維持するだけでなく、より充実した豊かな生活を送るためにそれらが創造されてきたからです。サッカーを見ること、そしてサッカーをやることがどれだけ多くの人間に喜びを与えているかを考えれば、サッカーのプレーは「無形の文化財」と呼ぶにふさわしいといえます。
また、サッカーの歴史を振り返ってみれば、サッカーをやるために必要な用具用品が、製作技術の進歩や人間の美的感覚の変化に伴って形やデザインを変えている事実に気づきます。
世界のサッカーの先進国と呼ばれる国には、サッカー博物館を有している国がありますが、その場所にはサッカーをやるために必要だった「有形の文化財」が展示されています。
サッカーを見れば、有形・無形の文化財が存在していることがわかります。現在サッカーに携わっている人は、こうした文化財を大切に伝承、発展させていく義務があります。
Aサッカーは「同質文化」
「文化」というものを、一般的に『ある社会集団が歴史的に生み出し、その集団の成員が学習によって身につけ共有している広義の行動(感情、思考、動作などを含む)の型の総体である』〔集英社、イミダス、1989より〕と考えると、集団の違い、つまり国や地域、組織の違いによって、それぞれ独自の文化を創造してきています。
世界情勢をみれば、すべての分野において国際化が進んでいますが、そういう時代背景の中で、言葉や宗教、生活スタイルの違う人々とよりよいコミュニケーションを築くためには、そうした文化の違い、異文化を理解することが何よりも大切です。
しかし、岡野俊一郎氏は、人間は異文化だけでなく「同質文化」を持っていることを知るべきだと語っています。言葉や宗教、生活スタイルが違っても、みんなが同じことをやって楽しめるもの、それが「同質文化」であり、その代表例がスポーツ、そしてサッカーなのです。
“スポーツに国境はない”“スポーツは世界の共通語”などといわれていますが、それは“スポーツは同質文化である”ということの別の表現の仕方です。スポーツの中でもサッカーは特に優れた同質文化としての価値を持っているといえましょう。
Bサッカーは世界で最も人気のあるスポーツ
世界の平和の維持、各国の友好関係の発展、国際間題の解決などを目的として組織されている国際連合(国連、The United
Nations)には、世界の160か国近くが加盟していますが、サッカーの国際組識である国際サッカー連盟(Federation Internationale de
Football Association)にも、国連とほぼ同数の国が加盟しています。
スポーツの国際組織にこれほど多くの国が加盟しているのは、サッカーをおいて他にありません。しかも、そのほとんどの国において、サッカーが最も人気のあるスポーツなのです。サッカーはこの国の国技だ、という国がたくさんあります。
そういう意味では、サッカーというスポーツが、国際交流や国際親善に果たす役割は非常に大きなものがあります。サッカーという同質文化を通じて異文化を理解し、お互いの友好と親善をはかる。それが、サッカ−というスポーツに携わる人の使命でもあります。
サッカーの世界では、4年に1度世界選手権(ワールドカップ)が開催されますが、この大会に対する世界の関心や注目の度合いは、スポーツすべての祭典であるオリンピックに匹敵する、あるいはそれ以上といわれています。
1930年にウルグアイで始まったこのワールドカップは、サッカーの進歩、発展の中心となる大会で、これまで数々のドラマを生んできました。イギリスのエリザベス女王がこの大会を見て、『サッカーは人生の縮図である』といったほどです。
「少年サッカーの指導」著者 加藤 久 より